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ご案内処

村さんの手紙

鳴門の漁師、村さんからお手紙をいただきました。
それによると…残念ながら若布をお止めになるそうです。

拝啓
 紅葉の季節、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。日頃は格別のお引き立てをいただき、ありがたく御礼申し上げます。

 さてこのたび諸般の事情により、来年の販売を持ちまして若布の生産を終了させていただきたくご連絡申し上げます。皆様の長年にわたるご愛顧に心から感謝申し上げますとともに、力不足を深くお詫び申し上げる次第でございます。

 ご存知の通り現在の村家の本業は魚を獲ることであり、若布の生産は副業として行ってまいりました。しかしながら品質向上を身上とするあまり生産量・作業量ともに副業の枠をはるかに超え、本業にまで支障をきたす状況となってしまいました。
 現在の品質を維持しつつ本業と平行して続けていくのは難しいと判断し、若布生産の終了を決断いたしました。

 若布の生産には秋と春の年に二回、作業のピークがございます。実はこの時期必ず作業の後に体調を崩し、一週間から二週間ほど寝込むのが毎年の恒例となっており、体力的な限界を感じているのも事実です。
 また里浦漁業協同組合では、年々若布生産者が減っており、今まで大勢で分担できていた作業を、少ない人数で行うことが多く、副業にしては負担が大きくなってきております。

 今年中に行いたかった鱸漁の技術研究も全くの手付かずとなってしまい、大変悔しい思いをしております。
 皆様も感じていらっしゃると思いますが、地球上の環境は今までと大きく変わってきております。特に汽水域に暮らす魚は海流からも河川からも多大な影響を受けるため、これまでの考え方では通用しない事柄が多々ございます。
 この状況を含め今後は環境面にも配慮した研究に集中し、日本漁師の技術をさらに高め、高品質の魚を世界に広めて行きたいと考えております。

 村家は百六十年、四代に渡り若布産業に携わってまいりました。皆様にもご先祖様にも大変申し訳なく思いますが、魚か若布かどちらを取るかという選択を迫られ、魚を取りました。
 今後、若布生産の技術後継者が現れた時のために、道具は全て保管いたします。また、生産技術につきましても徳島県立工業技術センターに基本的な技術は保管していただいております。

 なお、昆布の生産は続けてまいりますが、生産量に限りが御座いますので販売は魚取引店舗に限らせていただきたくお願い申し上げます。

 本来であれば皆様を直接お尋ねし、ご挨拶するのが筋とは存じますが、このような形でご報告させていただきますこと重ねてお詫び申し上げます。
 勝手な御願いは御座いますが皆様には今後とも変わらぬご指導のほど賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

敬具

平成二十一年十月十日

村 公一
家族一同

【註】文字遣い等、すべて原文のまま

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